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M&Aインタビュー

砂川 大(株式会社スマートラウンド 代表取締役社長)

労働というアセットを
細切れにして売買できないだろうか?
という原点

まず、起業に至るまでの経緯を教えていただけますか?

最初、起業するつもりは全くありませんでした。大学在学中に労働経済を勉強していた時に、労働というアセットを細切れにして売買できないだろうか、ちょっと空いた時間でバイトをすることってできないかなとずっと考えていたんですよね。ただ実際はできなかったんです。3時間あったとして行き帰りでそれぞれで1時間、だとすると働けるのは1時間。結局3時間で1,000円にしかならないので経済合理性がないんですよね。

ところがその年、KDDI株式会社が全ての携帯端末にGPSを載せることを発表しました。携帯でGPSを使って、近くにバイトできるところあるとわかれば、行き帰りにそれぞれ1分で2時間58分働くことができる。つまり3時間が3,000円になる、ということを思いついたんです。

せっかくだからと当時務めていた三菱商事株式会社の新規事業部門にビジネスモデルを持って行ったんですが全く箸にも棒にも掛からなかった。それなら起業するか、と一念発起しました。
まず特許を提出して、その間3年かかるので勉強がてらVCに就職しました。そこではベンチャーキャピタルとは何か、起業とは何かということを叩き込まれましたし、色々な経営者の方とも出会えたりして、たくさんのことを学んで日本に帰ってきて2005年に起業しました。その時に創ったのが「おてつだいネットワークス」というサービスです。

ただ労働市場に軸を置くのか、位置情報という技術自体に軸を置くのか、どちらがスケールするだろうかと考えた結果、GPSがきっかけでこのビジネスが生まれたので、位置情報に軸を置いてロケーションベースドサービスという位置づけで、株式会社ロケーションバリュー、"位置情報には価値がある"というコンセプトで始めました。

M&Aが8割なアメリカと
IPO前提の日本との常識の違いに驚いた

起業されたときはイグジットについてどう考えていましたか?

そもそもアメリカではイグジットは基本的に8:2でM&Aなんです。それが常識だと思っていたので、最初の投資契約を見たときに「IPOを目指すこと」って書いてあるのを見て、IPOを目指すなんて一言も言ってないのにと驚愕しました。買い戻し条項もがっつり入っていて、それならデットじゃないですか、と。なんでエクイティなのにデットの条項が入ってるんだと、アメリカで経験してきたこととの違いにびっくりしましたね。

ただ、日本のVCで仕事をやっていたらそれが常識だと思って飲んでしまっていたかもしれないなと思います。一番驚いたのは、あるVCさんに「額面で」って言われたんですよ。僕が投資した額と同じ額でということですか?と。
基本的に買い戻さなければいけない、それを投資額と一緒でっていうのは完全にリスクをこちら側に振っていることになるので、それは飲めませんとお伝えしました。自分自身に経験があったというのもあるし、他のVCさんともお話をしていたので、他のところに行きますと強く言えたのもラッキーだったと思います。

多くの人がそこで苦しんでいますよね。

どうしても情報の隔たりがありますよね。VCさんは生業としてスタートアップ投資をやっておられるので当然ながらプロですが、こちらは初めての起業なので、事業内容に関してはプロフェッショナルかもしれないけど殊更ファイナンスについては不利な戦いを強いられているのを肌身で感じています。

起業後はM&Aを目指して事業を進めていかれたんですか?

M&Aを目指していた、というよりもM&Aも最初からオプションとして考えていたという感じです。そもそも僕らがIPOをして公でやっていけるだけの基盤になれるかどうか、という点で判定されるべきだと思っていたので、そこまで行けばIPOという選択肢もありだと思っていました。そうでない場合には、育ててくれるようなところとシナジーを見つけてM&Aをするのがオプションだろうと考えていましたね。

ドコモ・ドットコムさんへのバイアウトまでの経緯を教えていただけますか?

おてつだいネットワークスが軌道に乗ってきたところでリーマンショックが起きて、どの店もアルバイト雇わない時代になってしまったんです。そこでおてつだいネットワークスを半分ピボットし、時限クーポンサイト「イマナラ!」というサービスを始めました。おてつだいネットワークスの「近くを歩いているアルバイトを瞬間的に雇えます」に対して、「近くを歩いているお客さんを呼び込めます」というコンセプトで、10分以内に来てくれたら50%オフにしますというクーポンを飲食店が発行できる、というサービスです。

ただ、飲食店の営業ってすごく大変なんですよ。1社獲得するのに3万円位かかったりするんです。そこで、じゃあチェーン店を取ればいいんじゃないかと安直に考えたんです。例えばワタミさんで500店舗を1商談で取ることができたら、3万円で500店舗取れますよね。と思ったら「いやいやテストだから3店舗からかな」と言われてしまって、結局3店舗しか取れなかったんです(笑)

それならばチェーン店専用のアプリを作ってあげたらいいんじゃないかと。イマナラをOEM化して他のチェーン店さんに提供するというサービスを始めました。そしたらすごくうまくいって、軒並み超ビッグネームを取ることができたんです。その時にドコモ・ドットコムさんからお声がけをいただき、お客さんが被っているのとドコモ・ドットコムさんのOtoOの部隊が近しいことを考えていらしたのもあって、バイアウトをしました。僕がロケーションバリューをリードしない方がPMIはうまくいくだろうということで、僕の役割が終わったという感じです。

ロックアップ期間が終わった後にGoogleに入られて、その後スマートラウンドを起業されましたよね。

元々位置情報サービスをやっていたのもあって、Googleマップの開発をやってほしいとお声がけいただいたのが始まりです。Googleマップの裏側を見てみたいという興味もありました。ただ、大企業って合わないな、ワクワクしないなというのを薄々感じていたんです。会社の方針の中の一つをやるわけですが、自分だったらこうするのになと思うことがたくさんあった時に、規模を縮小して自分のやりたいようにやるのか、大きなインパクトを求めて大企業でやるのか、それは個人の好みによると思いますが、僕は前者だった。地べたを這って0→1をやりたいという思いがずっとあったので、3年経ったところでやめることにしました。

最初にイグジットしたときにある程度資金ができたのでエンジェル投資を始めたんですが、10社を超えたあたりからどこにいくら投資していたのか管理ができなくなってきてしまったんです。それを管理するツールがほしいなと思って作り始めたのが、スマートラウンドの原型です。

情報の非対称性を認識して
地に足をつけてビジネスを育てていく

今、スタートアップをするのにはすごくいい時代ですよね。

起業を2回やるとその時代変化をまざまざと感じますよね。今はコワーキングオフィスもあってオフィスが無くても起業できますが、最初はオフィスが無ければ会社なんて作れなかったですし銀行口座も作れない、電話も引かないとビジネスにならなかったですよね。

当然投資のスタイルも、昔は全て普通株で行きますという感じだったけれど、今ではシードの場合コンバーチブルエクイティを使うとか色々とやり方がありますし、自分の事業のことだけに注力ができるので、そういう意味で非常に恵まれてるなと感じています。

若いスタートアップ起業家に対して何かメッセージをお願いします。

僕が若い起業家にぜひ伝えたいことは、情報の非対称性をしっかり認識してまわりに踊らされないこと、しっかり勉強してやるべきことを着実にやっていくことだと思っています。
特にスタートアップの世界って賑やかな人たちが多くて、派手にやっている部分がありますよね。ただそれって本質ではないと思ってるんです。特にパーティーに出なくとも、事業は進めていくことができる。地に足をつけてビジネスを育てていくことに注力していくことが大事なんじゃないかなと思います。

砂川 大 プロフィール

慶應義塾大学法学部卒業後、三菱商事株式会社入社。海外向け鉄道案件を手掛ける。その後、ハーバード・ビジネス・スクールに留学、卒業後は米国独立系VCであるGlobespan Capital Partnersに入社し、ディレクターとして投資先の事業開発を行う。同社日本代表を経て、株式会社ロケーションバリューを起業し複数の位置情報サービスを展開。株式会社ドコモ・ドットコムに同社を売却、ロックアップ期間を経てGoogleに入社。Googleマップ製品開発部長、Androidの事業統括部長を歴任。2018年2月にGoogleを離れ、5月に株式会社スマートラウンドを起業。また個人としては、エンジェルとして国内外のスタートアップに積極的に投資している。