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M&Aインタビュー

家入 一真②(株式会社CAMPFIRE 代表取締役社長)

起業をすすめた以上
失敗したときに自己責任を語るのは
無責任だと考えるようになった

家入さんは社会性が強いビジネスを常に作り続けていますよね

立ち上げる時は、価値観が根っこから変わるようなものをいきなり作ろうとは思っていなくて、自分や身近な人がこういうのあったらいいのになと思うものをただ形にしてるだけという感覚で。友人向けに作ったものが他の日本中の人たちから、こういうの待ってましたという形で求められる方向にだんだん広がっていってるだけなんです。

GMOペパボも、当時は完全に無料のサーバーか少し高めの月額サーバーしかなくて、無料だと広告が入ってきてしまうし、かといって月額2、3千円を払えるかというと難しい。自分も絵を描いていたし作品をアップするために学生が払える金額で広告が出ないサーバーを作ろうと思ったのが最初でした。いざ立ち上げてみると、学生や女性でもウェブサイトを作る人が増えていって、次はドメインが欲しい、ショッピングカート、ブログのサービスが欲しい、という感じでどんどんサービスが増えていきました。いきなり社会貢献性の高いものを作ろうとか個人の自己表現をサポートしようと考えているわけではないんですよね。

起業家は報われないことも多く、起業家の幸せってなんだろうとよく考えるんですが、家入さんはどう考えておられますか?

動物の生態を研究している子と「なぜスタートアップ界隈の人たちはファーストペンギンの話が好きなんですか?」って話をしたことがあって。大量のペンギンの中で先陣を切ってアザラシやシャチがいないかを確認する。その後に他のペンギンたちも海に入っていく。そんな勇気ある、リスクを取る一番目のペンギンにみんななりたがるよねっていう話なんですが、確かにみんな好きですよね(笑)

でもその子によると、よく見てみると実はそのペンギンは体重を後ろにかけているらしいんです。要は、本当は海に落ちたくないんだけど後ろから押された結果、落ちざるを得なかったのがファーストペンギンなんだと。その話を聞いてものすごい共感してしまって。起業家というとカリスマリーダーでみんなをぐいぐい引っ張って、リスクに応じたリターンもしっかり得ていてすばらしい人間、もしくはギラギラした人間って思われがちだけど、実はリーダーってそういう感じで生まれたりするなと思ったんですね。

ここ数年、カジュアルに起業できる世の中になったと実感していて。大学生が在学中に起業して投資することも増えてますし、最近では高校生の起業家相談も増えている。今までのように大学進学、就職という道だけではなく、生きるカードが増えたというのは素晴らしいことだなと思うんです。ただ一方で全員が成功するわけじゃない。むしろ大多数はうまくいかないし、最終的に心が病んでしまったり、まわりを傷つけて終わってしまうこともある。そういう時によく語られてしまう言葉が「自己責任」なんですよね。起業ってそうなるのも含めて自己責任だから仕方ないと思われがちだし、自分も起業家の先輩として、起業はいいよと煽る側にいると思う。でもそうやって起業をすすめた以上、起業した子たちが失敗したときに自己責任を語るのはあまりにも無責任なんじゃないか、ってここ数年ずっと考えているんです。

経験があるからこそわかることがありますし、そこをサポートしてあげたいですよね。

本当にその通りですよね。心の問題も、何となく最近様子おかしいなとか、Twitterの発言がちょっとおかしいぞとか、その段階で気づいてあげられたら後々手は打てたのに、ということが往々にしてあるんですよね。ビジネス的にも、もうあと1年早ければ色々と出口を考えられたのに、とかね。

起業家の心の問題って今後しっかり取り組んでいかないといけない問題だと思うんです。今の時代のように起業がカジュアルになってきた中で、失敗しても戻ってこれる場所や、小さくてもいいからイグジットするところまでを伴走してあげる仕組みだったり、リバ邸のようにここにいればとりあえず仲間を集めて小さくスタートすることができる、っていう場所があることを前提に始まる起業というのもこれからは大事だと思っています。最近は起業家のメンタルケアプログラムをオンラインカウンセリングの会社さんと一緒に作らせてもらっていますし、まさに恵島さんがやられてることがそういうことなのかなって思うので、そこをどうにか仕組みにできないかなと僕も模索しています。

10年前に比べて世界中を飛び回れるようになった分複雑化してきているからこそ、自分にとって価値のあるイグジットとか経営って何だろう、というところを今の起業家たちにも大事にしてほしいですよね。

よく若い起業家たちに、本質をちゃんと考えていこうという話をするんです。新しいサービスをやろうと思うという相談に対して、もちろん新しいサービスをやるのはいいけれど、それってもともと持っていた思想から本質的にずれてないですか?と。ピボットする時にはなぜこれをやるのか、ってところを言語化して社員に語る必要があるし、追い込まれている時や八方塞がりに感じている時って、新しいことを始めることで何かをやっている感を出してしまう、攻めることで逃げてしまうことってありますよね。

そういう時、メンターとしてやるべきことって「こうした方がいいよ」という答えを出すことではなくて、「本質的に合ってる?」と問いを投げてあげることだと思うし、そういう存在でありたいなと思っています。

日本は課題先進国と呼ばれていて、先進国として豊かさを実現したものの様々な課題に直面している状況ってすごくレアな国だと思うんですね。僕はこの国でビジネスを通してどういった課題解決モデルを作ることができるか、っていうのがすごく楽しみなんです。他の国もやがて直面するであろう課題に向き合ってるはずなので、日本で作ったモデルの中から他国でも通用するものが生まれるんじゃないかって思っている。今そこに向けて課題感を感じているんですね。それ以外に日本にいる理由ってないような気もしてるんです。

CAMPFIREを通して全国を回っていると「この地域と東京だとどっちがいいですか」ってことを毎回聞かれます。その度に伝えるのは、比較するものじゃないということ、そして違いなんてないよという嘘は言わないということ。例えば宮崎と東京の何が違いますかって聞かれたとき、人口数も全然違うし経済的にも大小がある。でも宮崎の方が素晴らしいものだってたくさんある。どことどう違うか、という物差しを持って比べてしまうことで人は不幸になってしまうなって思ってるんです。

大事なのは、そもそも違うということと、その違いを尊重することなんですよね。違いがあるってことを前提に、じゃあ自分たちはどうあるべきか、どういうサービスを作っていけるのかというところに落とし込んでいけば、比較せずに自分たちだけの幸せのモデルをきっと作れるはずだと思っています。

家入 一真 プロフィール

1978年、福岡県出身。 「ロリポップ」「minne」など個人向けサービスを運営する株式会社paperboy&co.(現GMOペパボ)を福岡で創業、2008年にJASDAQ市場最年少で上場。退任後、2011年クラウドファンディング「CAMPFIRE」を運営する株式会社CAMPFIREを創業、代表取締役社長に就任。他にもBASE株式会社の共同創業取締役、エンジェル投資家として80社を超えるスタートアップへの投資・支援、現代の駆け込み寺シェアハウス「リバ邸」の全国展開なども。 2018年、シード向けベンチャーキャピタル「NOW」を設立。第一号として、最大50億円規模のファンドを組成。生きづらさを抱える人の居場所づくりや、「やさしい革命」を合言葉に、テクノロジーによる社会のアップデートを人生のテーマに活動中。